物価の歪みが見せる「人工的な安さ」の正体
「世界一物価が高い国」と言われるスイスに、この夏1週間滞在しました。
滞在中に毎日スーパーに通い、気づいたことがあります。
それは──スイスが高いのではなく、日本が異常に安すぎるということです。
野菜と果物はほぼ同じ価格
スイスのスーパーで売られている人参やじゃがいもは、日本とほぼ同じ価格帯。
むしろ果物は、日本より安い場合すらあります。
しかも量り売りが基本で「必要な分だけ」買える。袋詰めや規格統一の手間がない分、販売コストが抑えられているのです。
一方、日本の農作物は規格・流通にコストが積み上がり、政策による価格調整も加わる。
その結果、価格は人工的に安定しているように見えて、実は歪みを抱えているのです。
卵:世界一高いスイス、世界の中でも異様に安い日本
卵は象徴的な存在でした。スイスでは1個100円ほど。
一方、日本は世界でも屈指の安さ。
養鶏業への補助金や長年の価格統制が背景にあり、これが「卵は安くて当たり前」という感覚を国民に植え付けてきました。
ただし、その安さは永遠に続くわけではありません。飼料やエネルギー価格が上がれば、一気に跳ねるリスクを孕んでいます。
外食と自炊:日本だけが妙に近い
スイスでは外食は圧倒的に高い。名物チーズフォンデュは一人前5,000円近い値段。
高い。でも人件費や場所代、光熱費を考えれば妥当なのかもしれません。
むしろ異様なのは日本。自分で材料を調達して自炊しても、外食してもかかる費用は大して変わらないのです。
これは人件費が価格に反映されない構造と、外食産業が低価格競争で体力を削ってきた歴史を示しています。
ランチが安すぎるカラクリ
スイスではランチもディナーも同じ価格。
日本の「ランチは格安、夜は高い」という構造は、実は酒に依存して成り立っています。
夜にアルコールを売ることで採算を取り、そのロスを減らすためにランチ営業を安く回す。
接待文化に支えられてきた価格モデルです。
しかし接待需要が減り、賃上げ圧力が高まる中、このビジネスモデルがどこまで持つのかは疑問です。
加工肉:文化の違いがそのまま値段に
スイスでは鶏肉は日本の3倍近くする一方、加工肉と生肉の価格差がほとんどありません。
加工肉は保存性が高く、廃棄コストが少ないためです。
日本では「加工肉=高級品」として売られていますが、スイスのシンプルなソーセージやハムはむしろ日常食。
この違いもまた、規格と流通に縛られた日本の構造を映し出しています。
水とジュースの逆転
スイスのスーパーには炭酸水ばかり並んでいました。
理由は簡単で、水道水がおいしく安全だから。
逆に驚いたのはジュースの安さ。果汁100%のオレンジジュースが、日本の濃縮還元と同じくらいの価格で買えます。
「本物」が安く、「代替品」が高い──これは日本とは真逆の光景です。
結論:日本の物価も上がる、そう、ポップコーンのように。
スイスに滞在して見えたのは、物価の高さそのものではなく、日本の“安さの不思議”でした。
それは農業政策や外食文化など、さまざまな要因が積み重なった結果かもしれません。
インフレが本格化すれば、この“人工的な安さ”がポップコーンのように弾けていく──
そんな未来を、旅先でふと想像してしまったのです。
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